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桑名市長
伊藤 徳宇 氏 インタビュー

桑名市という街はどんな街ですか。

桑名市長伊藤 徳宇 氏

桑名は昔から木曽三川の恵みのもとで豊かさを享受してきた街です。揖斐川、長良川、木曽川が伊勢湾に流れ込む河口部がありますが、これらの大きな川によって美味しいハマグリが獲れます。最盛期は3000トンほど収穫できていたものの、干潟の干拓などの影響もあり一時期は激減していましたが、近年は回復傾向にあります。若い漁師も増加しており、ハマグリのブランド価値が高くなってきています。桑名のハマグリは内湾性の干潟に生息するハマグリで、波にもまれず育つため、やわらかく身がぷっくりとして甘みが強い、非常に美味しいハマグリとなっています。
また、大きな川が流れていたこともあり、交通の要所でもありました。江戸時代は、名古屋のほうから伊勢や京都へ向かおうとすると陸路では通れない場所でした。東海道五十三次の42番目の宿場町として栄えた町でもあります。愛知県側の宮の渡し(名古屋市熱田区)から桑名の七里の渡しまでは東海道唯一の海上路でした。天候によっては船が出ないこともあり、どうしても宿が必要であったため栄えていました。桑名は徳川家にとって最も重要な場所の一つと考えられていたため、徳川四天王のひとり本多忠勝が初代藩主として配置されました。本多忠勝は武士として関ヶ原の戦いなどで活躍しましたが、政治家としても立派に務めました。なかでも大きな業績が、町割り(慶長の町割り)を断行したことです。それが現在まで街の形として残っています。治水事業でも、街の中を流れていた員弁川の流れを街の外を流れるようにするなど貢献してくれました。
その後の歴史をみると大きな出来事も起こっています。戊辰戦争では桑名は幕府側であったため、負けて開城しました。第二次世界大戦でも飛行機を作る工場があったため、かなりの爆撃を受け、非常に大きな被害を受けました。その後には伊勢湾台風が襲来し、全てが水に浸かってしまう事態になりました。そういった時でも忠勝の町割りにそって復興し、発展してきた街です。来年、忠勝が桑名藩主になってから420年となりますので、「忠勝プロジェクト」としていろいろとやっていきたいと考えています。

歴史ある街で現在も残っている文化などは何がありますか。

8月第1日曜日とその前日に行われる「石取祭」があります。土曜日の午前0時から大きな音がドカンと響き、「日本一やかましい祭り」として知られていますが、河原で綺麗な石を取り神社に奉納することに由来します。しかし、ただ単に石を運ぶだけではつまらなかったのでしょうか、石を運ぶ車に提灯や太鼓、鉦を乗せて、大きな音を出しながら今の祭りの形になっていったと言われています。2016年にユネスコ無形文化遺産となり、非常に盛り上がりを見せています。

また、5月4、5日には、馬に少年が乗り、坂を駆け上がる多度大社の「上げ馬神事」が開催され、多くの方が足を運んでくれます。高校生くらいの青年が4月1日に神様から選ばれ、そこから1か月間、体を清め、馬に乗る練習をしていきます。小さい頃から見て育ってきているためか、短い期間で乗れるようになっています。6地区から選ばれた少年が当日馬に乗り、6頭のうち前半の方が多く駆け上がれば「早く植えたコメが豊作」、後半の方が多い場合「遅く植えたコメが豊作」と言われている農耕の祭りです。ですが、2019年は地区制になってから初めて乗り子がいない地区がでました。少子化の波が祭りにも現れていますね。

祭りがしっかり残っているのはありがたいことです。昔から培ってきた伝統・文化が残りながらも、新しいものを積極的に取り入れていく街でもあります。その一つに、いまや日本をリードする「ナガシマリゾート」があります。年間約1500万人にお越しいただいていますが、日本で2番目に来場者が多いリゾートスポットとなっています。新東名高速道路が開通、延伸された効果でしょうか、関東からの来場者が増えています。また、新名神高速道路の開通により岡山から、加えて空路ではLCCの登場で北海道からも足を運んでくれる方が増えてきていると聞いています。

一方で、宿泊施設に課題があります。ナガシマリゾートにはいくつか宿泊施設がありますが、市内では少し弱さを感じます。泊まっていただけるようになれば、ナガシマリゾートで遊んで帰るではなく、ナガシマリゾートで遊ぶ前後の1日に他の場所の観光にも使っていただけるようになると思います。

新興の産業などはどうでしょう。

いま頑張っていただいているのは「なばな」です。もともと長島が産地で、質のいい「なばな」が多く取れており、「なばなの里」という観光施設ができるほどです。昔は油を絞るのが主でしたが、今では食用として流通するように変わっています。
新しい取り組みとしては「桑名もち小麦」があります。米にもち米があるように、小麦にも粘性の高いもち小麦があります。パンなどに使用すると、もっちりとした食感に仕上がります。そのもち小麦栽培を頑張っていただいている農家さんが出て来ています。ブランド化、流通などチームで頑張ってPRしてもらっています。

街として変えていくべき部分はありますか。

名古屋に近いということもあり、住みやすい街として多くの方が移り住んで来ていただいています。桑名市の西部には新興住宅街ができ発展しています。名古屋在勤者も多く、最近は市内及び周辺地域に工場が増えて来ましたので、便利なところにすみたいと思う人たちも増えてきています。人口としては、ありがたいことに社会増となっています。鉄道も4路線走っていますし、高速道路もどんどん便利になってきています。

そのなかで、「選ばれるまちになろう」と言っています。「桑名に住みたい、居たい、行きたい」と思われるような街を作ろうというものです。その中で注目しているのが2027年のリニア開通です。東京-名古屋が約40分で移動できるようになると言われています。名古屋-桑名は約20分ですから約1時間で東京と繋がります。そのためには、市の中心市街地でもある桑名駅周辺地区に力を入れて進めています。以前、2015年に実施した桑名市民満足度調査では、もっとも満足度が低かったのが中心市街地という結果でした。こういったことから、なんとか桑名駅周辺地区を変えようと2016年から桑名駅自由通路及び橋上駅舎の工事に着手しています。もともと駅の西と東は、改札を通らなければ抜けることができませんでしたが、東西誰でも通れる通路をつくり、駅舎を構え現代風の駅に生まれ変わります。2020年8月に第1期工事が完了します。

しかし、駅が新しくなるだけでは、中心市街地が変わったとは言えません。駅に直結する商業施設も必要になります。これらの商業施設は民間提案で作っていただこうと考えています。行政がお金を出して作るのではなく、公民連携による持続可能なまちづくりをしていくための民間提案を募集しており、今年度中には構想が見えてくると思います。これから2、3年で劇的に桑名駅周辺が変わると思っています。

桑名の街全体としてはいかがですか。

市の人口は、全体としては近隣から移り住んでいただくなど社会増ではありますが、どうしても自然減つまり少子化に抗うことができなくなっている面も出てきています。そこで、市として考えているのは「ベースとなるものが必要だ」ということです。ソフトも含めたインフラですね。例えば、医療、教育などですが、そういった部分にまで愚直に追求し、住み良い街にしていくことが定住化につながると思っています。2018年4月には新しい総合医療センターが完成しました。こちらは、もともとあった桑名の市民病院と民間の病院2つが統合し独立行政法人としてやっています。国が進めている地域医療構想に先駆けて進めてきました。実はこの地域は医療過疎と呼ばれていた地域でした。救急車の搬送なども県外にお願いすることもありましたが、市内で対応することが可能になりました。医療センターができて以降、周辺で開業する医師もみられ、桑名市の医療レベルはかなり良くなっています。

一方で、市だけではどうにもならないことは国や県に要望として伝えていきます。それは、桑名市を安全な場所にして欲しいということです。桑名の大半は海抜ゼロメートル地帯にあります。特に長島町は全体がゼロメートルエリアです。堤防で町全体を囲い、排水機場で水を排出することで浸水を防いでいます。国道1号線に揖斐川、長良川にかかる伊勢大橋という橋があります。1934年(昭和9年)に完成した橋ですが、過去に建設されたもので、その橋の部分の堤防が一部低くなっています。堤防は一か所でも役目を果たせなければ、大変なことになってしまいます。そういった部分を安全にしていただけるよう発信していきます。私は、桑名という街は安全な場所である限り、まだまだ発展できる余地は十分にある街だと思っています。

市長の日常はどのようにお過ごしで。

公私の切り替えは非常に重要だと思っています。その中で3つ実践していることがあります。1つはランニングです。毎朝までは行きませんが、走ることで全く考えない時間が得られます。走りながら頭の中をリセットする感じです。2つ目は音楽鑑賞です。仕事柄移動が多いので、移動の際はジャンルを問わず聞いています。昔は旅をするのが好きでしたが、なかなか旅に出ることはかないません。世界中の音楽を聞いて、旅をしている気持ちに浸っています。3つ目は家族に料理を振る舞っています。ローストポークやアクアパッツァなどいろいろ挑戦しています。「美味しい」と言わせることができれば、家族サービスにもなりますし、いい気分転換にもなります。

最近読んだ本の中で良かったと思うのは「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」(発行元:日経BP社)です。事実(データ)に基づいて分析すると世界は良くなっている、というものです。実際、犯罪は減少傾向にありますが、大きく報道で取り上げられることであたかも増えているように錯覚します。周囲に振り回されることなく、データからしっかり世の中をみることも重要だと、改めて教えてもらうことになりました。