朝日町長
矢野 すみお 氏 インタビュー
失礼ながら60歳を過ぎてからの出馬ですね。よくぞ決意されました。
朝日町長矢野 すみお 氏
実は50年ぶりの帰郷なんです。大学から社会人とずっと三重を離れた生活でした。しかし、一昨年高齢の父が床に伏したこともあってしばらくはこちらと東京を行き来してました。そんな中で幼馴染みの町長から「ドクターストップで次回の出馬が叶わないので後をお願いしたい」という話が持ち込まれました。
当時は、まだ民間会社で仕事をしておりましたので真剣に検討するまでには至りませんでしたが、その後も自分が帰省する度に自宅に来てくれました。彼と政策の推進状況や町の将来に関する話をする中で「現在の町は若者比率が高く、元気な町として認識されているが、10年後、20年後の朝日町には不安要素がある」という点で認識が一致して「将来の朝日町を考えて行く必要がある」ということで立候補を決意致しました。
国政、県政を問わず多くの議員、首長を輩出している松下政経塾で仕事をしてきた経験が今回の決意に大いに影響していると思いますが、正直言って、自分が選挙の当事者になるとは思っておりませんでした。
スタート当時から、地元に残っていた小中学時代の12人の友人が快く力を貸してくれました。
私達は68歳でしたが、人生90歳、100歳の時代といわれておりましたので力を合わせてこの町のために頑張ろうということになりました。
対抗候補からは「50年ぶりの浦島太郎に町のことがわかるのか」と批判もされましたが、地元事情に拘束されないことで、かえって客観的に町を見ることが出来ると考えておりました。
同時に、民間での企業経営経験をフルに活用できると考えておりましたし、松下政経塾に関わっていたことから、全国で活躍している多数の国会議員、知事、地方議員の知り合いも多いので彼らから助言を得たり、情報収集ができるのは自分にしかない強みであると自分を鼓舞して選挙運動を戦って参りました。
朝日町の特徴は?
朝日町は三重県で一番面積が小さい町です。人口の方も、私が50年前に朝日町を出た時の人口が7000人ぐらいで、その後も長くあまり変わらなかったのですが、ここ十数年で9000人台から平成30年には10800人台と飛躍的に増加致しました。町の西部にあった丘陵地域が住宅地に開発されたことが大幅な人口増につながったのです。新しい住宅地は都市部からの転入者が多く、若者比率が高い町であるといわれております。ただ、10年後、20年後はどうなるかといった心配もあり今後の町政運営の大きなテーマであると考えております。
それと町の自慢と言えば、交通の便が良いことですね。JRでも近鉄でも名古屋まで35分~40分、四日市まで15分程度です。新しく住宅地に来られた方には名古屋、四日市への通勤者が多いです。こんな小さな町に電車の駅がJRと近鉄の2つもあるのですよ。伊勢湾岸道路のインターなどもあって陸路もよくなってきたから、売り物は経済活動に有利な交通立地の良さと若い労働力が確保できるということだと思います。
産業面では1938年に東芝三重工場が設立され、長い間、町の発展の象徴として活動していただいておりますが、産業構造の変化で現在は同社のグループ会社が中心となって活動されておられます。
昔話になりますが、私が小学校4年生の頃に鉄筋4階建ての円形小学校ができました。当時は大きな話題となって全国から見学が来られました。
それと、もう一つの町のシンボルは緑の田園風景です。
狭い朝日町ですが、今も約100ヘクタールの田んぼがあります。その7割を約10人の農業の担い手のグループが種苗生産から収穫まで請け負っておられます。
全員が農家ですので、田んぼや米へのこだわりが強く、農業が生活そのものという方々ですが、平均年齢が70歳レベルという点が悩ましいところです。この田園エリアを今後どのように活用して行くかということが今後の朝日の発展に大いに関係すると考えております。住宅地として開発できるのか、商業用地、工場用地、物流倉庫等に転用できるのかということが、今後の町の運命に大きくかかわると思います。町の立地環境は素晴らしいので可能性は無限にありますが、法的な規制もありますので、今後の町の大きな課題であると認識しております。
具体的な振興策は?
企業誘致については、現在のところ誘致を出来る用地は1か所だけですが、できるだけ速やかに見通しをつけたいと考えています。また、地元の商工業振興につきましては、こちらから訪問させていただきながら色々な話を聞かせていただくつもりです。これが民間出身の私のスタイルです。
現在、地元には200社程度の企業がございますが小規模会社が殆どで2ケタの従業員を有する会社は少数です。家族経営というケースがかなり多いのも事実です。このようなケースでも、今後も家業を続けて行きたいとお考えの方にはお話を伺いながら、如何に支援するかということを考えて行くつもりです。
新興住宅エリア開発の際に誘致したスーパーマーケット「オオクワ」は本社が和歌山で西日本に160店舗ほどあると聞いていますが、朝日店は人気が高く、いつも繁盛しております。町内の年配者に「循環バスが走るようになったら、どこに一番行きたいですか?」と尋ねたところ、医院、駅、役場を抑えて一番の順番でした。誘致の成功事例の筆頭になると思います。
国や県への要望があれば?
先ほどもお話ししましたが、農地以外の土地で利用できるところが限られています。朝日町は交通の便も整い、道路事情も良い。こうした好立地環境を踏まえて、緑の田園を有効に活用する方策を国や県に相談したいと考えております。
ご趣味は?
自宅が古い家で敷地も広いので、その一画で家庭菜園をしています。東京時代は200倍の抽選を経てわずか2坪の家庭菜園を楽しんでおりました。この夏はトマト・キュウリ・なす等を栽培して、自家用程度の収穫も出来ました。また、東京では週に3~4回はスポーツジムに通っておりましたのでこちらでも入会しましたが、忙しくて週に1回程度の目標が果たせておりません。
読書も好きで、東京の時は家の近くの図書館をよく利用しました。通勤途上や出張の移動時間が読書時間になるのですが、年間に100~120冊の本を借りて読んでおりました。備忘録用にと読書記録も作っておりました。好きな分野はフィクションですね。ハウツーものやビジネス書は読みません。好きな作家は浅田次郎かな。「プリズンホテル」のような奇想天外なストーリーや「蒼穹の昴」等、中国の歴史をテーマにした作品が気に入っています。
「民間の経験」、「民間の知恵」といった言葉に共鳴、共感いたします。そこでは、経験が大事であって年齢ではありませんね。お元気で活躍されるよう祈念しております。
ありがとうございました。