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とうかいTABUNKA通信

孫冬燕さん

 今から50年前,名古屋市で開催された第31回世界卓球選手権に中国選手が出場したことを契機として,アメリカを始めとする欧米諸国と中国の外交が活発になっていきました。これがいわゆる,「ピンポン外交」です。そして,翌年には日中共同宣言が発表され,日本と中国の国交正常化も実現しました。
 つまり,今年(2021年)と来年(2022年)は,戦後の日中関係における節目(50周年)の年といえます。加えて,2021年夏は東京五輪,そして2022年冬には北京五輪が開催されます。節目の年を迎え日中関係は今後どのように発展していくのでしょうか。
 さて,今回はそのような日中交流の始まりの場所といえる愛知県で活躍する在日中国人の画家・孫冬燕さんに,ご自身が運営する児童絵画教室「文運画堂」や絵画を通じた国際交流活動の紹介,さらには,多文化共生社会に対する思いや新型コロナウイルスの影響について,お話を聞いてみました。


日本のマンガ文化に触れてみたい,大好きな絵画を学ぶため,日本へ

孫さんのご出身はどちらでしょうか。  中華人民共和国江蘇省揚州市の出身です。中国国内の東部に位置しています。上海のすぐ近くと言えば,日本人には伝わりやすいかもしれませんね。
揚州市はどのようなところでしょうか?  日本に近い位置であるため,気候は日本と変わらないです。揚州市は特に名古屋市の気候に近いですね。また,揚州市は,古くから書家や画家といったいわゆる文人が多い土地柄でもあります。そのほか,有名な観光地といえば,痩西湖や揚州大明寺などが挙げられます。ちなみに,この揚州大明寺の住職を務めていた方は,皆さんもよくご存じの鑑真です。
来日したのはいつ頃でしょうか。  来日したのは1999年です。私が育った揚州市は文人が多いところで,私自身も自然と絵画や書道といったものに興味を抱くようになりました。その中でも,特に興味があったのが,日本のマンガでした。どうしても日本のマンガ文化に直接触れてみたいという思いから,来日を決意しました。
愛知県に来た理由は何でしょうか。  知人が既に愛知県で暮らしていたので,私も生活の拠点を愛知県にしました。
日本での生活について,つらい経験や困ったことはありますか。  来日後,知人から油絵の先生を紹介してもらい,その方の下で油絵の勉強をしていました。しかし,日本語の言葉の壁に悩まされ,結局その先生から離れることになってしまいました。専門的な用語や微妙なニュアンスを日本語で表現するのが難しいと感じました。ただ,絵の勉強は続けたいと思っていたので,独学で絵の勉強をしながら日本語学校に通うことにしました。

アーティスト・孫冬燕として活動

絵画・書道といった芸術の道に進むことを決めた理由を教えてください。  文人が多い揚州市の土地柄もあって,私は子どもの頃から絵を描いたり文字を書くことが大好きでした。成長するにつれてどんどん好きになり,高校生の時にはポスターの絵で一等賞を受賞したこともありました。そうしたことがきっかけで,大学も美術学部を専攻し,将来は書道家や画家になろうと決心しました。なお,中国では水墨画家の胡祝三先生に師事していました。 孫さんが絵を描く上で心掛けていることは何でしょうか。  私は常に前向きで繊細な心を持ち続けて生き,楽しく美しい人生を送りたいと思っています。そして絵を描くときは,私の記憶の中に印象として残っている事や好きな詩,夢などを思い出したりしています。自分の絵を鑑賞した人に,私の思いや人生観などが少しでも伝われば幸いです。
主な出展作品や受賞歴を教えてください。  小牧市内で開催される展示会に毎年5回程度出展しています。受賞作品には,油絵「一生懸命」や「牧歌の里」などがあります。そのほかにも複数回受賞したことがあります。また,今年は名古屋市・愛知県美術館で開かれた美術展にも出展し,水墨画牡丹「笑紅塵」が教育賞を受賞しました。

絵画教室「文運画堂」を開催 ~子供たちに絵の楽しさを教えたい~

「文運画堂」を始めるまでの道のりを教えてください。  元々は夫と二人で中華料理店を経営していた時に,お店の休憩時間を利用して,近所に住む子供たちやお客さんに絵を教えていたことが始まりです。そこから,「孫先生の絵をもっと多くの子供たちに広めるべき」という皆さんの後押しを受けて,2015年に絵画教室「文運画堂」を開くことになりました。生徒の募集は特にしていませんでしたが,知り合いの紹介などでどんどん広がっていき,今では名古屋市と犬山市で教室を定期的に開催するほどに大きくなりました。当初は,日本人の子供たちが多かったですが,在日中国人の子供たちもだんだん増えてきています。
「文運画堂」という名称の由来を教えてください。  「文」は文化と知識,「運」はスポーツと健康を表し,「画堂」は書道と絵画教室を意味しています。子供が文武両道に育ってほしいと願う親は多いと思いますが,文運画堂はそれを体現しています。
「文運画堂」についてご紹介願います。  毎月異なるテーマやカリキュラムを設定して,子供たちに絵画や書道を教えています。また,中国の四字熟語や詩の読み書きといった学習も実施しています。文運画堂に通う子供たちは,国籍や年齢に関係なく,楽しく和気あいあいとしています。このほか,公園などで絵を描く課外授業を取り入れたり,各種コンテストに作品を出展しています。
どのような展示会に作品を出展しましたか。  小牧市が主催する市民美術展や小牧市の国際児童画協会(IKA)が主催した作品展などに出展し,様々な賞も受賞しています。また,今年は中国浙江省杭州市で開かれた国際少年児童マンガコンクールにも作品を多数出展しました。
コロナの影響はいかがでしょうか。  名古屋教室も犬山教室も各回の参加人数を少数に限定して,密を避けるようにしています。消毒,換気,マスク着用も当然実施しています。暑い時期には熱中症にも気を付けなければならないので,適度な水分補給や休憩をしながら常に子供の様子をみています。
今後の目標や夢について,可能な範囲でお聞かせください。  もっと多くの子供たちが「文運画堂」に参加してくれることを願っています。そのために,教室を増やしたり,オンライン教室などを開催することも考えています。

多文化共生について,こう思う

日本は外国人が暮らしやすいところだと思いますか。  暮らしやすいところだと思います。理由は,国籍を問わず働く意欲があれば誰でも働ける環境が整っているため,仕事を見つけやすく,生活を安定させやすいことが挙げられます。
多文化共生社会をさらに実現していくために,もっとこうした方が良いというご意見がありましたらお聞かせください。  国籍や民族などの異なる人々が,不自由なく住める環境をもっと充実させることで,多文化共生社会がさらに発展していくと考えられます。

新型コロナウイルスの影響

そして故郷のコロナの現状孫先生の身の回りでどのような影響がありましたか。  私を含め,家族全員がコロナのことを怖い病気だと思っています。実際,家族の一人が通常の風邪(コロナではない)を引いた時でも,家族全員で毎日体温等のチェックし,トイレとベッドも別々にしました。
コロナ関連の支援活動で何か携わったことはありますか。  中国で最初にコロナが流行した当時,中国ではマスクが大量に必要とされていたため,日本から中国へマスクを送る活動に参加しました。また,中国武漢市に対する募金活動が行われた時には,文運画堂の子供たちと一緒に私も募金しました。
故郷の状況はいかがでしょうか。  ほとんどの人がワクチン接種を済ませているので,感染はほぼ収束し,マスクの着用も緩和されています。

最後に

同郷の中国人の皆さんに,元気の出る応援メッセージをお願いします。  日中双方の文化を学び,互いに理解し交流することで,相互の信頼関係が強固になっていくと思います。中国人の皆さんも日本人の皆さんも共に明るい未来を築いていきましょう。

~~関連情報~~


書道と絵画教室「文運画堂」

〇 名古屋教室
 場所:イーブルなごや(名古屋市中区大井町7-25)
 日時:毎週日曜日 9:00~16:30
     (この時間内で,計3回・各回約2時間ずつに分けて開催)
 定員:各回6名程度

〇 名古屋新栄教室(2021年9月より新規開講)
 場所:名古屋市中区新栄1-49-18 第一ビル3階
 日時:毎週木曜日 15:30~17:30
  ※夏休み期間中のみ 11:00~13:00
 定員:10名程度

〇 犬山教室
 場所:犬山勤労青少年ホーム(犬山市羽黒新田上堅筬1-1)
 日時:毎週月曜日 15:30~18:30
    毎週土曜日 15:00~18:00
 定員:各曜日10名程度

<お問い合わせ>
電話番号:090-4251-8908
メール:tubame10232@me.com