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とうかいTABUNKA通信

サガールさん

 日本にはたくさんのインド料理店があり,その数は年々増加しています。その中でも東海地方は,増え方がとても顕著で,街のあちこちでインド料理店を見かけます。一説には「濃い味を好む地域なので,スパイスの効いたインド料理は東海地方の人々の嗜好に合うのではないか」とも言われているそうです。
 今回は,そうしたインド料理激戦区で働く在日インド人シェフのサガールさんに,出店までの道のりや多文化共生社会に対する思い,そして新型コロナウイルスの影響などについて,お話を伺いました。


料理人として来日

サガールさんのご出身はどちらでしょうか。 インドの首都・ニューデリーです。インドの中では一番の都会で,名古屋よりも人口は多く,土地も広いです。さらに,夏の暑さも名古屋を上回ります。
故郷にはインド料理店がたくさんありますか。 もちろんインド料理店は多いですが,最近では日本料理店も多くなっています。日本の会社がインドにどんどん進出していることが影響しているのだと思います。
     来日したのはいつ頃でしょうか。 初来日は今から約30年前になります。そこから日本で働き,たまにインドに帰国するという生活を続けています。
来日の経緯や理由を教えてください。 二十歳半ばくらいの時,インドで料理関係の仕事をしていたのですが,その頃に知り合ったインド人から「日本へ行って私の店で働かないか」と誘われたことがきっかけです。もともと外国へ行ってみたいとも思っていたので,私はこの誘いに応じることにしました。ちなみに,そのインド人は名古屋・栄エリアでインド料理店を営んでいる方でした。

その後は名古屋にあるインド料理店で働いたり,北海道にある系列店で働いたこともありました。
日本での生活について,つらい経験や困ったことはありますか。 やはり言葉の壁ですね。ただ,日本語の勉強のために学校へ行くことはせず,仕事仲間やお客さんなどと積極的に会話することで日本語力を鍛えました。そのため,会話は得意ですが漢字の読み書きは苦手です。ちなみに,ひらがなとカタカナの読み書きはできます。
文化や習慣の違いを感じることはありましたか。 インドでは,「家族」というものをとても大事にします。親が子供を育てて面倒を見るのは日本でも当然ですが,インドでは,成長した子供が親の面倒を見ることも当たり前とされています。インドには日本のような年金制度がないため,老後の親の世話をするのは子供の義務なのです。

そのほか,インドと大きく異なることは治安面ですかね。日本はとても治安が良い国なので,私だけでなく多くの外国人が安心して暮らしていると思います。

独立して出店へ~スパイスエクスプレスの誕生~

インド料理店「スパイスエクスプレス」出店までの道のりを教えてください。 私が働いていた名古屋・栄のインド料理店にお客さんとしてよく来店されていた日本人経営者に誘われたことがきっかけです。そこから,その日本人経営者と準備を進めて,2011年8月にインド料理店「スパイスエクスプレス」を出店し,ついに独立することができました。
お店の紹介をお願いします。 「スパイスエクスプレス」は,大須商店街・万松寺通り沿いにある商業施設「大須301ビル」の3階にあります。インド料理の定番であるカレーを中心に様々なインド料理を楽しむことができるお店となっています。また,インド料理店はネパール人が経営するお店が多いですが,当店はすべてインド人のスタッフで運営しています。さらに,当店はスパイスの効いた本格的なインド料理を提供していますが,日本人の口にも合うように辛さを抑え気味に調整することもできますので,是非,食べに来てください。
店名の由来について教えてください。 インド料理店の代名詞である「スパイス」を店名にすることで,「ここが本格的なインド料理を食べられる店」ということをお客さんに分かりやすく伝えられると思い,「スパイスエクスプレス」に決めました。
なぜ大須商店街に出店されたのですか。 大須は人通りが多いにもかかわらずインド料理店が少ない地域でしたので,これは絶好のチャンスだと思い,出店を決意しました。
出店するまでに大変だったことはありましたか。 出店するための資金をATMから下ろすために銀行へ行ったのですが,その際,私がちょっと目を離した隙にお金を盗まれてしまったことがありました。自分の不注意もありましたが,この事件は今でも苦い思い出です。私が外国人ということもあってか,銀行の方も警察の方もあまり真剣に取り合ってくれず,結局,犯人は分からず,盗まれたお金が戻ってくることもありませんでした。
「スパイスエクスプレス」を大須以外で見かけたという口コミがありますが,本当でしょうか。 実は,名古屋・栄エリアにある久屋大通公園で毎年開催されている「ワールドフード+ふれ愛フェスタ」や「名古屋ウィメンズマラソン」,「愛知なごや雪まつり」などのイベントに出店した経験があります。今後もどこかのイベントでお会いすることがあるかもしれませんね。

新型コロナウイルスの影響 そして,今後の展望について

新型コロナウイルスの影響について教えてください。 以前からテイクアウトは取り扱っていましたが,コロナ禍でテイクアウトの注文が増えました。その代わり,お店に直接食べに来てくれるお客さんは激減しました。特に,一番の稼ぎ時であるゴールデンウィーク,お盆,年末年始といった大型連休の時期に,感染拡大と営業自粛が重なったため,店にとっては大ダメージです。お店の電話が鳴る時は,予約ではなく,「予約のキャンセル」ばかりでした。
今後の展望についてお聞かせください。 実は,「スパイスエクスプレス」の2号店の出店を昨年(2020年)から検討していたのですが,コロナの影響でその計画は一時中止していました。ただ,ワクチン開発が進み,いよいよコロナの収束が見え始めてきたようなので,コロナが落ち着いた頃には,2号店出店計画を再始動したいと考えています。2021年は「スパイスエクスプレス」オープンから10周年という節目の年でもあるので,どうにか2021年内に2号店を出店できたらいいなと思っています。

多文化共生について,こう思う

日本は外国人が暮らしやすいところだと思いますか。 暮らしやすいところだと思います。理由は,なんといっても安心で平和な国だからです。諸外国と比べて,日本は圧倒的に治安が良い国だと思います。
多文化共生社会をさらに実現していくために,もっとこうした方が良いというご意見がありましたら是非お聞かせ下さい。 外国人に対する様々な制度が設けられていますが,それがとても複雑で分かりづらいと思います。その中でも納得できない制度があります。それは両親が外国人の場合,その間に生まれた子どもは日本国籍を持つことができないという制度です。まさに私の家族がこれに該当するのですが,日本でずっと暮らすことを望む子どもにとって,あまりにも酷な制度だと思います。諸外国を見ても,こうした制度はあまり存在しないと思います。もう少し情勢や実態に合わせて,制度の見直しをすべきだと思います。

最後に

同郷のインド人の皆さんに,元気の出る応援メッセージをお願いします。 今はコロナで大変な時期ですが,負けずに頑張っていきましょう。「つらく暗い日々でも,いつか必ず明るい未来が訪れる」というインドのことわざを思い出してください。

~~関連情報~~


インド料理「スパイスエクスプレス」
住所:愛知県名古屋市中区大須3-30-60 大須301ビル3階
(地下鉄上前津駅9番出口より北へ徒歩2分)
電話番号:052-241-2117
営業時間:ランチ
<平日>11時から15時 <土日祝日>11時から17時
ディナー
17時から23時
(定休日 火曜日のディナー)
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため,時短営業や臨時休業の可能性がありますので,来店にあたっては事前に店舗へご確認ください。