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とうかいTABUNKA通信

孟麗華さん

 皆さんは「民族」という言葉から何を連想されますか。おそらく,沖縄の琉球民族や北海道のアイヌ民族などが思い浮かぶ方もいれば,そもそも「民族」というものにあまり馴染みがないという方も多いかもしれません。しかし,世界に目を向けると,ひとつの国家の中に複数の民族が混在しているという国は意外と多いものです。
 今回は,そうした多民族国家のひとつである中国の出身で,「朝鮮民族中国人」という肩書を持ちながら,「食」を通じた国際交流活動をされている孟麗華さんにお話を伺いました。


朝鮮族中国人として来日

孟さんの出身はどちらでしょうか。 中国吉林省延辺というところです。中国の北東に位置していて,ロシアや朝鮮民主主義人民共和国が近くにあります。日本の北海道と同じくらいの緯度なので,すごく寒い地域です。また,延辺は,朝鮮民族が数多く暮らす地域であり,「朝鮮族自治州」に定められています。
朝鮮族自治州である延辺についてご紹介願います。 朝鮮民族が自ら管理している地域(自治州)のことを指して朝鮮族自治州というのですが,日本人にはあまり馴染みのない言葉だと思います。朝鮮民族が多く集まる街であるため,中国国内にもかかわらず,街中には朝鮮語があふれていて,中国語と混在しています。また,教育面において,朝鮮語と中国語の両方を学んでいます。さらに家庭では,中国料理だけでなく,キムチなどの伝統的な朝鮮料理が並ぶことも多いです。

最近の傾向としては,都市部などへの人口流出によって,朝鮮民族が減少し,漢民族の割合が高くなってきていることが挙げられます。ちなみに,延辺には朝鮮民族と漢民族のほかに,ウイグル族やモンゴル族などの民族も暮らしています。
来日した理由について教えてください。 日本語に対する興味が高かった私は,延辺大学の日本語学部を専攻し,将来は日本語を教える先生になりたいと考えていました。そのためには,日本語や日本の文化を直接肌で感じ,さらに経験を積む必要があると思い,日本へ行くことを決意しました。
日本語に興味を持ったのはなぜでしょうか。 祖母から日本語をよく聞かされていたことが一番のきっかけだと思います。小さい頃から日本語に触れる機会が多く,そこからさらに,中学,高校と日本語を専攻したことで,日本の言語や文化をもっと知りたいと思うようになりました。
来日の経緯について教えてください。 初来日は2002年4月で,留学生として来日しました。当時は今のような大学間の留学という方法がなく,インターネットで簡単に調べられるような時代でもなかったので,訪日を仲介する中国の会社に直接依頼して日本へ行く準備を進めました。その結果,名古屋にある日本語学校に入学するという形で来日することになりました。しかし,中学,高校,大学と日本語を学んできた私にとって,日本語学校という場所は私には合わなかったため,すぐに止めてしまいました。そして私は,もっとハイレベルな学び場を探しました。それが名古屋大学でした。

その後,名古屋大学の教授に手紙を出すなどして入学に向けて積極的に行動し,どうにか無事に名古屋大学院への入学を果たしました。ちなみに専攻は言語・音声学分野です。中国語,朝鮮語,日本語が話せるという珍しい能力が認められたのではないかと思っています。
来日してから,つらい経験はありましたか。また,文化や習慣の違いを感じましたか。 もともと日本語ができたので,特に苦労したことはなかったです。また中国とは文化や習慣の面で異なることはありましたが,それもすぐに受け入れることができました。
卒業後の進路について教えて下さい 大学院卒業後は就職するか,進学するか,帰国するかですごく悩みましたが,結果的に就職する道を選びました。日本語が大好きでしたので就職して,もっともっと人と関わっていきたいと考えたからです。ただ現実は厳しく配属先が技術職や事務職といった,人との関わりが少ない部署にしか配属されない時期もありました。また結婚や出産を経て子供の育児も重なり,仕事を続けていくことがどんどん困難になっていきました。

そうした中で新たに始めたのが「料理教室」でした。

「食」を通じた国際交流活動

「料理教室」を始めたのはいつ頃ですか。 2015年から始めて約5年が経ちました。家事・育児と両立しながらでしたので,基本的には週末に開催していました。
なぜ料理教室を始めたのですか。 私の故郷の料理を日本人や在日中国人に味わってもらいたい,故郷の味を日本にも広めたいという思いから始めました。また料理教室を開催することで,多くの日本人や在日中国人などと交流することができるため,人と関わることが大好きな私にとっては最高の場所になるはずだとも考えました。
料理教室ではどのようなレッスンが行われているのですか。 伝統的な朝鮮料理全般からお菓子作り,さらには韓国発祥のフラワーケーキも作っています。参加者も老若男女さまざまで和気あいあいでレッスンしています。
そのほかに「食」を通じた国際交流活動がありましたら,ご紹介願います。 なごや環境大学の共通講座でNPO法人「ノートルモンド名古屋」が主催する料理講座の講師を務めています。ちなみに2020年はコロナ禍のため,リモート形式で開催しました。

コロナ禍で始めた「食」の新規事業

新たにオープンされた「三姉妹フーズ」についてご紹介願います。 コロナが一時的に落ち着いてきた2020年10月に,韓国惣菜とお餅の販売専門店「三姉妹フーズ」をオープンしました。「おいしいものを届ける・健康を届ける・笑顔を届ける」の3つ(三姉妹)を目標に,無添加と有機素材にこだわった韓国惣菜やお餅を作っています。さらに特別な日に大切な方への贈り物としてとてもおすすめの韓国発祥のフラワーケーキも作っています。

なお今はコロナ禍のため,電話やFAXで注文を受け付けて自宅に届ける宅配専門店となっています。また名古屋市内にある中国物産店でも「三姉妹フーズ」の惣菜やお餅を購入することもできます。
孟さんがお一人で作っているのですか。 私だけでなく子育て中のママさんたちを中心に数人のスタッフで作っています。ただ私を含めてスタッフの皆さんは家事・育児も抱えているため,まだまだ人手不足な状況です。そのため私たちと一緒に韓国惣菜やお餅,フラワーケーキを作ってみたいという方を募集していますので,興味のある方は是非ご連絡ください。
コロナ禍でお店を始めた理由を教えてください。 料理教室を始めた時から,いつか故郷の味を日本に広めたいと考えていたので,出店することは常に頭の片隅にありました。そうした中,コロナの影響で物件の価格が下がっている情報を聞きつけて,物件探しを始めたところ,ちょうど良い価格と場所を探し当てることができたので出店することを決めました。また宅配専門という非接触型の業態であれば,ステイホームが求められるコロナ禍でもやっていけると思い,逆に今が出店のチャンスだと考えました。
出店するまでに苦労したことはありますか。 開店資金があまり多くなかったので,できるだけ節約しようと思い,内装のリフォームを格安の業者に依頼しました。その結果,店の図面製作から機材の採寸に至るまで私が自分でやらなければならず,とても苦労しました。
今後の展望について教えて下さい。 コロナが落ち着いたら,店頭販売も実施していきたいと考えています。また今は中断している料理教室についても店が軌道に乗ってきたら再開していきたいと思っています。これからも中国と日本をつなげるきっかけ作りに貢献していけたらと思っています。

多文化共生について,こう思う

日本は外国人が暮らしやすいところだと思いますか。 とても暮らしやすいところだと思います。日本は,食べ物や治安などあらゆる面で安全な国といえます。そうしたことが外国人にとっては,すごく安心できる環境だと思います。
多文化共生社会をさらに実現していくために,もっとこうした方が良いというご意見がありましたら是非お聞かせ下さい。 私は日本が好きで,自ら日本語を勉強した上で望んで留学生として来日しました。そのため,言葉の壁や文化の違いといったもので困ることはあまりありませんでした。しかし結婚や出産を機に来日した外国人も多くいることを忘れてはいけません。そうした外国人は,言葉も分からず日本の文化や習慣も知りません。そのため,そうした外国人をサポートする体制をもっと構築していく必要があると思います。
「食」を通じた国際交流に取り組まれている孟さんの好きな料理ベスト3を教えて下さい。 まず1位は,中国の水餃子ですね。そして第2位が韓国のキムチ,第3位が日本のお寿司ですかね。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスでどのような影響がありましたか。 生活様式や人との関わり方が大きく変わってしまい,そのことが大きなストレスとなっています。また子供への影響も相当出ていると感じています。入学後すぐに発令された緊急事態宣言で登校できなくなった上に,学校では常にマスクを着けている状況のため,「友達の顔と名前を覚えられない」という児童が多くなっているそうです。実は私の小学一年生の息子についても,担任の先生から「お友達の顔と名前をまだ覚えていない」と言われました。これは本当に悲しい事態だと思います。一日も早くコロナが収束すればよいと願っています。

最後に

同郷の中国人の皆さんに,元気の出る応援メッセージをお願いします。 コロナ禍ですが,故郷のおいしいものを食べて,心身ともに元気にハッピーになってください。

~~関連情報~~


本場韓国お惣菜&餅専門店「三姉妹フーズ」
所在地:名古屋市天白区島田2-905 エスペランサ天白2B
電話:090-8736-6688