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とうかいTABUNKA通信

ヌルヘリ・ヤヤさん

 自動車関連産業が盛んな愛知県豊田市には,数多くのインドネシア人が暮らしています。そして同市内で在日インドネシア人の支援活動などに取り組む「一般社団法人豊田インドネシアグループ」(通称:TIG)という団体が存在します。今回は「TIG」で活動している在日インドネシア人のヌルヘリ・ヤヤさんに,TIGでの活動や多文化共生に対する思いなどについて,話を伺いました。


故郷のために,日本で働く決意

来日の経緯について,教えて下さい。 高校卒業後,インドネシア・ジャワ島西部の都市ガルットにある職業訓練校に入学しました。そして,オートバイが大好きだった私は,同訓練校でオートバイ関連のことを一年間学びました。「日本で働く」という道を知り興味を持ち始めたのは,丁度その頃でした。

そして2000年9月,人生初の飛行機に乗って私は,公益財団法人国際人材育成機構(通称:IMMジャパン)の研修生として,来日しました。
日本に来て,苦労したことや困ったことはありましたか。 苦労したことは,やはり言葉でした。来日前に,IMMジャパンの訓練校でも約4か月間,日本語の勉強をしましたが,それでも苦労しました。というのも,来日して最初に派遣された会社が関西地方でして,そこで使われていた言葉がすべて関西弁だったからです。私が勉強してきた日本語とは全く違う言語に思えてしまい,当時は本当に苦労しました。そのため,来日後も仕事をしながら日本語(関西弁)を勉強するという日々が続きました。

そのほかにも,気候面では,インドネシアよりも寒くて雪が降るという環境に慣れるまで苦労させられました。また,食事に関しても,故郷よりかなり薄味だと感じました。インドネシアは,味が濃いものや油っこい食べ物が多いですからね。ただ,今ではもう和食が大好きになり,特に,ブリ大根が大好物です。
初来日から約20年が経ちますが,故郷に帰りたいと思ったことはありますか。 もちろん帰りたいと思ったことはありますし,実際に何度か帰国しています。今の会社(自動車部品関連の製造業)には,2014年頃から勤めていますが,私の希望でインドネシアにある拠点工場に異動させてもらった時期もあります。なお,現在は愛知県大府市にある工場で正社員として働いており,おかげさまで安定した収入を得ることができています。
現在の職場に,外国人は多いですか。 会社全体では千人近くの規模になるので外国人がどれだけ在籍しているかは分かりません。ただ,私が所属する部署内ですと日本人,ブラジル人,ベトナム人,中国人などが在籍しています。約2~3割が外国人だと思います。また,海外にも複数の拠点工場があり,グローバルな会社だと思っています。

職場の仲間とは,国籍を問わず,休憩時間などによく会話を交わしています。その中でも特に親しい方とは,休日に魚釣りへ出掛けることもあります。

「TIG」の一員として、仲間の支援に乗り出す

ヌルヘリさんが所属されている「TIG」とは、どのような団体ですか。 「TIG」は,日本とインドネシアの良好な関係をさらに発展させることを活動の目的としています。具体的には,インドネシアの文化や芸術を紹介するイベントの企画・運営のほか,在日インドネシア人の支援などに取り組んでいます。また,在日インドネシア人に対して,日本の文化や習慣,同郷の仲間の活躍振りを紹介するフリーペーパー「サハバット」も発行しています。

自動車産業が盛んな愛知県豊田市には多くのインドネシア人が暮らしており,「TIG」の設立当初は,そうした豊田市在住のインドネシア人が交流する場(コミュニティ)として機能していました。その後,公益財団法人「豊田市国際交流協会」が主催する「ナショナルデー」という催しに参加したことを皮切りに,日本とインドネシア間における草の根外交を行うまでに発展し,2019年8月,「一般社団法人TIG」として正式に登録されました。
ヌルヘリさんは、「TIG」でどのような活動をされているのですか。 2019年4月に「特定技能」という在留資格が新設されました。私は,主に元技能実習生のインドネシア人を対象として,この「特定技能」制度に関する説明や相談に乗ったりしています。ただ,「特定技能」については,知識や経験が私自身にも不足しているので,同じく「TIG」メンバーのムルヨノ先輩と協力しながら取り組んでいます。

このほか,「TIG」は,SDGsをテーマとしたイベントも計画しており,私は,その企画や準備にも携わっています。
「在日インドネシア人の支援」は、具体的にどのような活動でしょうか。 来日したばかりのインドネシア人は,言葉の壁の影響で生活に困っている方が多いです。例えば,「ゴミの分別方法が分からない」,「ハラル食品をどこで購入すればいいのか」,「礼拝に関する悩み」などが挙げられます。「TIG」では,そうした悩みや不安を抱えるインドネシア人の相談に乗ったり,問題解決のための話し合いに同行したりします。
フリーペーパー「サハバット」について、ご紹介願います。 「TIG」は在日インドネシア人向けに発行している無料の雑誌で,日本の文化や習慣のほか,日本で活躍しているインドネシア人の社会活動やビジネスなども紹介しています。
名古屋市内では毎年、「インドネシアフェスティバル」が開催されていますが、このイベントには携わっていますか。 「同フェスティバル」は,ナゴヤ・インドネシア文化協会(通称:PKIN)とインドネシア留学生協会(通称:PPI)が中心となって開催しています。実は,「TIG」のメンバーの1人が「PKIN」にも所属しており,その方の紹介で「TIG」もフェスティバルの開催準備などに携わるようになりました。フェスティバルでは,インドネシアの歌や楽器,伝統舞踊が披露されたり,インドネシアの伝統料理も味わうことができる屋台もたくさんありますので,是非お越し下さい。
「TIG」の今後の目標や展望について、お聞かせ下さい。 「TIG」は,2019年11月27日に「とよたSDGsパートナー」として登録されました。そのため,今後は,SDGs(持続可能な開発目標)に沿って,活動していきたいと考えています。インドネシア人が日本で活躍できるような環境作りに貢献し,インドネシアと日本の架け橋的な存在になりたいと考えています。

多文化共生について、こう思う

2019年に出入国管理法が改正され、在留資格「特定技能」が新設されましたが、このことについてご意見を聞かせて下さい。 外国人が日本に来る機会が広がると考えられるため,新制度については歓迎しています。ただ,当初想定していたほど,外国人労働者が増えていないとも感じています。その原因としては,旧制度時代に技能実習生であった外国人が日本で再び働こうとした場合,新制度ではそのハードルがあまりにも高すぎて,そうした外国人が入国できないでいるからだと考えられます。

新制度で特定技能外国人と認められるためには,技能 と日本語能力の二つの水準を満たす必要があります。そして,旧制度時代に技能実習生であった外国人が再び日本で働くためには,この二つの水準を満たしていることを証明する「評価調書」をかつての受け入れ企業等に作成してもらうか,特定技能評価試験という超難関の試験に合格するしかないのです。現状,どちらの場合を選択しても,旧制度の外国人労働者にとっては狭き門となっています。

過去に技能実習生として来日し,技能も日本語スキルも十分なのだから,新制度になったからといって再度狭き門をくぐらせるのはあまりにも酷な話だと思います。何らかの優遇措置があってもいいのではないでしょうか。この点が改善されれば,外国人労働者がさらに拡大し,日本はもっとグローバルになると思います。
日本は、外国人が暮らしやすいところだと思いますか。また、その理由について教えて下さい。 外国人向けの仕事が充実しているほか,外国人が参加しやすい交流の場やイベントも多いため,とても暮らしやすいと感じています。さらに,行政や企業も「外国人」を仲間として受け入れようとする姿勢が感じられます。

最後に

在日インドネシア人の皆さんに向けて,メッセージをお願いします。 日本で暮らすからには,どうしても言葉の壁にぶつかると思うので,日本語のスキルを高めるための勉強を頑張って下さい。また,日本に住んでいる以上,日本の規則を守り,日本の文化を尊重するようにしましょう。
逆に,日本人に向けてメッセージをお願いします。 日本人は,とても親切な方が多いです。ただ,中には見慣れない存在の「外国人」を見てすぐに「怪しい」と思ってしまう方もいるので,そのように思わないでほしいです。また,言葉の壁や文化の違いによって,時として誤解やトラブルが生じることもあるかと思いますが,お互いにしっかりと話し合えば分かり合えるはずなので,外国人の声に耳を傾けて頂き,外国人を温かい目で見てもらえたら幸いです。

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