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三重県知事
一見 勝之 氏 インタビュー

コロナ禍に就任されました。選挙中もその対策について訴えてました。
コロナ対策についてお聞かせください。

三重県知事一見 勝之 氏

【現在の感染状況の認識】
○三重県では8月以降、新規感染者が急増し、同26日には過去最多の515人となるなどでしたが、9月下旬からは新規感染者が急激な減少に転じ、10月14日をもって、飲食店への営業時間短縮要請などは終了しました。
 また、同18日には、3月22日以来210日ぶりに新規感染者数がゼロとなりました。
 いわゆる第5波は収束に向かいつつありますが、第6波は必ずやってくるという気持ちで備えなければなりません。

【みえコロナガード】
○県としては第6波への備えを万全にし、県民の皆さんの命と健康を守るため10月18日に、
 ①感染拡大防止アラート等の設定
 ②検査体制の整備
 ③ワクチン接種体制の整備
 ④医療提供体制の整備―を柱とする「みえコロナガード」を取りまとめました。


①は感染状況に応じ、県は段階的に
(1)感染拡大防止アラート
(2)感染拡大阻止宣言
(3)緊急警戒宣言
(4)まん延防止等重点措置
(5)緊急事態宣言
と強化していくこととしています。
 いずれの措置等も、基準に該当すれば自動的に発出して、人流の抑制等に努めることを予め明確に示しています。


 そして、感染拡大防止アラートについては、第5波の検証を行い、2日連続で17日以上の新規感染者が確認された場合に、その後の感染者が急増することが第3波・第4波で確認されましたので、経験則として基準に設定しました。この基準に達した場合は、感染防止対策の再度徹底や行動変容などをお願いすることになります。
 アラート発出後は、直近1週間の新規感染者数が10万人あたり8人以上、あるいは病床占有率30%以上となった場合に「感染拡大阻止宣言」を発出し、県境を越える移動を避けるなどをお願いすることになります。
 続いて、直近1週間の新規感染者数が10万人あたり15人以上、病床占有率30%以上、重症病床占有率20%以上のいずれか2つ以上となった場合に緊急警戒宣言を発出し、営業時間短縮要請等を行います。
 さらに、感染状況が悪化した場合は、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」に移行することが考えられます。

 ②については、「民間検査機関の活用等による保健所の検査体制の強化」と「無料PCR検査の推進、抗原定性検査キットの活用促進」を主に進めます。
 第5波の際、濃厚接触者への行政検査が一時期十分できなかったので、民間検査機関に一部をお任せすること等により検査体制を拡充させました。
 また、感染者の早期発見や感染拡大の防止につなげるため、県内に居住または就業・就学されている人を対象とした無料のPCR検査事業(検査数は12万件(1日あたり2,000件))を実施しています。
 県外との往来があるなど不安のある人は、無料のPCR検査をご活用いただければと思いますし、必要に応じて検査回数の追加も検討していきます。

 ③については、10月14日時点で、1回目の接種率が74.2%(全国73.7%)、2回目が65.7%(65.2%)と全国より進んでいる状況で、各市町の皆さんに改めて感謝申し上げます。
 ワクチン接種率が上がっていけば、それだけ次の波を小さく抑えられると考えています。
 一方、8、9月の県内感染者の状況を見ると30代以下の方が半数以上で、発症予防、重症化予防の観点からも、若年層へのワクチン接種をより一層推進することが重要と考えています。
 このため、モデルナワクチン接種の集団接種会場を、津市と四日市市の県内2カ所に開設していますが、さらに若年層の接種を推進するため、四日市市会場は接種日を追加して、12歳から29歳までの人に接種することとしています。

 第6波到来への備えとして、④は待ったなしの状況です。
 療養体制については病院、いわゆる酸素ステーション機能を持った臨時応急処置施設、宿泊療養施設、自宅療養の4段階で対応します。
 病院には、重症、中等症、妊婦さんなどの重症化リスクの高い人に入っていただくこととしており、最大で523床を確保しています。
 病床がひっ迫してきた場合に備え、中等症Ⅱの人に臨時応急施設に入っていただけるよう、10月に恒常的施設として、津市に1施設10床を確保しました。さらなる確保に向け、医療関係者と調整を進めているところです。
 また、宿泊療養施設には、酸素吸入が必要でない方、軽症・無症状で健康フォローアップが困難な人に入っていただくこととしており、これまで2カ所を確保していましたが、新たに鈴鹿市内に1施設116室を追加し、計3施設・375室を確保しました。
 宿泊療養施設についても、さらに2施設程度を確保したいと考えています。

国交省の上級官僚として歩まれてきました。
印象に残ったご経験についてエピソードなども交えてお話しください。

【危険なバス停問題と関わるきっかけ】
 私は国の行政官として35年間奉職してきました。
 三重県にも関係があった取り組みを挙げるとすれば、自動車局長時代の「危険なバス停の安全対策」があります。
 平成30年8月頃に横浜市で、小学5年生の女子児童が路線バスのバス停を降りた後、バスの後方の横断歩道を渡ろうとした際に、向い側から走ってきた車にはねられ、お亡くなりになったという痛ましい事故がありました。

 私がそのことを知ったのは事故から約1年後、自動車局長就任後で、あるマスコミの人からでした。
 その人は、事故1年後の節目にキャンペーンしたいと言われていましたが、さりながら、そういう危険なバス停を放置しておいていいんですかという疑問の声もいただきました。

【全国調査の実施へ】
 その人は、危険なバス停問題は、自治体との関わりが深いと考え、総務省にも相談されたそうですが、それは自治体の話なので総務省で対応することは難しいと言われたそうです。
 また、警察庁にも相談に行かれたそうですが、所轄の話とのことで、どこにも相談先がなく、自動車を所管している自動車局に来られました。

 ○その時、私は前職が海上保安庁でしたが、海上保安官は海で自分の命を賭して人命救助にあたっているのに、陸で子どもたちの命が失われていいのかという思いを持ち、「分かりました。やりましょう」ということで、全国の運輸局に指示をしまして、令和元年12月から全国のバス停調査を開始しました。

【全国調査の結果と現在の状況】
 バス停は全国に約40万カ所ありますが、地方運輸局が中心となって、自治体と警察に調べてもらい、令和3年3月頃に調査が完了しました。
 その結果、全国の約1万カ所のバス停が危険だと分かり、それらを3つのランクに分類し、1番危険なもの約1,600カ所から優先的に移設を進めていくことになりました。
 現在では、令和3年8月末時点で約1,000件程度、全体の約10%で対応が完了しました。

 ○三重県には、令和3年6月時点で125カ所の危険なバス停があり、うち57カ所で既に対応してもらうことができました。
 全国平均の対応率が約10%のところ、三重県においてはすでに約45%が対応済みで、県内自治体、三重運輸支局、警察、北勢国道事務所、バス協会、バス事業者等のご尽力に改めて感謝申し上げます。

その経験を今後の県政に生かすとしたらどんな施策をお考えでしょうか。

【自動車局長時代の経験】
 私は国土交通省で長い間勤務してきましたので、先ほどの「危険なバス停の安全対策」をはじめ、交通・運輸分野には自信があります。
 「危険なバス停の安全対策」については、県内ではまだ約半数が残っていますので、さらに取組を進められるように支援等を検討していきたいと思います。

【海上保安庁時代の経験】
 今後の県政に生かせる経験という観点では、平成25年から務めた海上保安庁の政務課長時代の危機管理対応があります。
 当時、尖閣諸島周辺の海域は、中国の海洋進出に伴い非常に厳しい状況になってきており、海上保安庁に求められる役割が大きくなってきたときでした。
 また、平和安全法制の制定に伴い、海上保安庁の役割がクローズアップされてきたときでもありましたので、この間、仲間と議論しながら、困難を一緒に乗り越えてきたということが強く印象に残っています。
 海上保安庁のモットーは「正義仁愛」で、大久保武雄初代海上保安庁長官が残された言葉です。
 正義は治安を守ることで、仁愛とは人命救助を指します。
 海上保安庁で培った危機管理対応能力を、目下の最重要課題である新型コロナ対応に生かせているのではと考えていますし、今後も大いに生かしていきたいと思います。

【35年間の行政官の経験】
 私は35年間の行政官を経て、三重県知事に就任しました。
 行政官生活が長かったので、行政官の立場での物事の捉え方ができ、県庁の職員・仲間の気持ちが分かることがメリットだと考えています。
 もちろん、選挙を通じて、県民の皆さんからもいろいろ貴重な話を伺いしましたので、そのことも政治家として判断をしていく上では、重要だと認識しています。
 行政官としての考え方だけでは、判断を誤ることにもつながりかねません。

 ○県知事としての仕事を改めて考えてみますと、国の行政経験があることはとても重要なことだと思います。
 今の県政を取り巻く状況では、何事も三重県だけで考えていては事足りるということはなく、国の行政に精通していなければ、県政のかじ取りはできないと考えています。
 全国知事会議があったときに知事の経歴を調べてみたのですが、47人中20数人が国の行政官出身でした。
 もちろん、それが必ずしもすべていいとは言いませんが、私は、国で局長まで経験させていただいたので、この経験は非常に大きいと改めて思っています。


2026年には三重県政150年を迎えられ、「みえ元気プラン」という総合戦略を検討中と伺っています。基本コンセプトだけでもご教示ください

 ○幾度となく災害に見舞われてきた三重県においては、県民の皆さんの安全・安心の確保を最優先としつつ、県内外に積極的に三重の魅力を発信し、県内産業の一層の振興を図り、人口減少などの課題に粘り強く対応することで、県民の皆さんを元気にすることが私の使命であると考えています。

 〇こうした取り組みを着実に進めていくため、県政150周年を迎える2026年を見据え、仮称「みえ元気プラン」を策定し、県民の皆さんが笑顔で明るく暮らせる社会づくりに全力で取り組みます。
 同プランの内容は、県民の皆さんや市町、県議会などからもご意見をいただきながら、議論を深めていきたいと考えています。

 ○三重の歴史をひも解くと、日本最古の正史「日本書紀」において、伊勢の国は「可怜国(うましくに)」、すなわち、海・山の豊かな食材に恵まれた自然豊かで美しい地域とされ、古くから伊勢を中心に発達した諸街道や都と東国を結ぶ最重要ルートとして栄えた東海道を通じ、人、もの、情報の交流が盛んでした。
 1876年に現在の三重県が誕生して以降は、交通網の発達や産業の集積が進み、地域に大きな被害をもたらした自然災害や公害を乗り越えながら、豊かな暮らしを実現してきました。恵まれた立地環境の中で、先人の知恵と努力の積み重ねにより、三重は多様な魅力を有する地域として発展してきており、長年培われた県土と産業・文化を今後の発展に最大限生かす必要があると考えます。

 〇一方、人口減少・高齢化の進展が加速し、大規模自然災害の脅威が増す中で、世界の情勢変化や新型コロナの感染拡大により、暮らしや経済の先行きが見通せない状況が続いています。
 直面するこのような課題を克服し、将来世代も含め県民の皆さんが元気に、かつ安全・安心に暮らすことのできる持続可能な地域となるよう、全力で取り組む必要があります。

 また、県内各地の特性に応じて地域資源を磨き上げ、未来を担う人を育て、先端技術等を積極的に取り入れながら、三重の魅力や競争力を高め、コロナ後の変化にも対応しつつ交流の拡大などにつなげることで、産業の振興をはじめとする地域課題の解決を図っていきます。
 このような考え方のもと、県民の皆さんとともに、強靱で多様な魅力あふれる現代の「美し国」をめざし、新たな三重づくりを進めていきます。

県議会や市町との関係について聞かせてください。


【県議会との関係】
 ○県議会の皆さんは、県民の皆さんの信任を得て選ばれた県民の代表者であり、県議会の議員と知事は、それぞれが県民からの負託に応える責務を負っていると認識しています。
 そのため、私としては、二元代表制のもと、県議会の皆さんとは緊張感のある関係を保ち、お互いに切磋琢磨しつつ、県政を推進する車の両輪として協力し合いながら、県民の皆さんの期待にお応えし、さらなる県の発展につなげていきたいと考えています。

【市町のとの関係】
 ○他方、市町は基礎自治体として、県民の皆さんに最も身近な存在であり、県の最大のパートナーであると考えています。
 県政の推進にあたっては、引き続き、市町の方々と相互に協力し、緊密に連携していく必要があります。
 連携を進めるうえで、市町のトップである市町長の皆さんとの対話は重要です。
 これまでの知事も市町長との対談等を行ってきましたが、私自身も地域に出向いて、市町長の皆さんと対話を行い、お聴きした声を県政に生かしていきたいと考えています。

その他、座右の銘などについても。

【座右の銘】
 ○座右の銘は、「鞠躬尽力」です。
 この言葉との出会いですが、小学校高学年か中学生の頃に三国志の本に触れる機会があり、諸葛孔明の生き様を描いた本をいくつか読んだ気がします。
 その中で、後出師の表に「鞠躬尽力し、死して後に已む」という言葉があり、謙虚な気持ちで全力を傾けるという良い言葉だと思っていました。
 その後、私が大臣秘書官としてお仕えした冬柴鐵三国土交通大臣が、好きな言葉として「鞠躬尽瘁」を挙げられていました。
 尽力でも尽瘁でもどちらでもいいんですが、その時に、自分がいいなと思っていた言葉と同じだったことに驚き、それまでも「鞠躬尽力」という言葉は好きでしたが、冬柴大臣も好きな言葉だということで、そこから謙虚な気持ちで全力を尽くすというのが公務員のあるべき姿だと思い、座右の銘にしました。

【毎日の日課】
 ○毎日の日課として起床後、柔軟体操と腹筋や腕立て伏せの筋トレを行っています。
 柔軟体操は、ここ2年ほどはコロナで休んでいますが、昔から空手を続けていまして、体が硬いとスピードや反応速度が遅くなりますし、関節の可動域が狭くなると、蹴る際に足が上がらなくなるので続けています。
 筋トレについては、年齢が年齢ですので、加齢ととともに筋肉が落ちてきていますので、筋肉を少しでも維持するために行っています。
 現在は、コロナへの対応として、朝夜に検温も欠かさず行っています。

【休日の過ごし方】
 ○休日はリラックスするために、意識的に体を動かすようにしています。
 また、湯船にゆっくり浸かるようにしています。
 最近はできていませんが、朝食を食べた後にカフェインレスのコーヒーをドリップして楽しむことが自分なりのリラックス方法です。
 知事に就任してからも、最近は中々ゆっくりとした時間がとることが難しいので、早くそういう時間を持ちたいと思います。



以上