伊勢市長
鈴木 健一 氏 インタビュー
伊勢市の特徴、お国自慢などを教えてください
伊賀市長鈴木 健一 氏
伊勢神宮の町として古くから栄え、市域の4分の1を占める神宮林や大台ケ原を源にする清流・宮川など豊かな自然、先人が育んできた歴史や文化に富んだ町です。「うまし国」と呼ばれるほど海・山・里の幸にも恵まれ、江戸時代には6人に1人、現在も年間800万人を超える人が訪れる心の故郷です。全国から愛されている恵まれた自然環境はSDGs(持続可能性)の原点でもあり、大事に守っていきたいと考えています。またみそぎのために海に入る習わしがある二見浦では、夫婦岩の二つの岩の間から、夏至の頃には陽が昇り、10月から1月には満月が昇ります。このような神秘的な風景のほか、空気が澄んだ日には富士山を望めることもあります。食べ物では江戸時代から伊勢うどんが人気でしたし、最近では伊勢肉や世界大会で金賞を獲得したクラフトビールが知られています。伊勢肉は柔らかくて味もしっかりしており、すき焼きや牛丼で親しまれています。参拝客が土産で買い求める赤福やへんば餅、くうや餅などがありますが、クラフトビールや日本酒も英国や米国へ観光PRキャンペーンで持っていき高い評価を受けました。
また伊勢志摩圏域の医療、教育、商業、公共施設など都市機能が集積しており、中核都市としての役割を担っています。
今後の振興策は?
当市の産業は一次産業2.7%、二次産業26.9%、三次産業70.4%の割合。一次産業の農業では、農産物のブランド化を図っており、青ねぎや市の天然記念物の蓮台寺柿、イチゴ、カボチャなどがあります。青ねぎは大阪で人気で、関西方面にたくさん出荷されています。山芋の一つでジャガイモのような形をした横輪いもも粘りが強いことで地域に根差した農作物として愛されています。
神道との関りが深い稲作は、宮川周辺の平野部を中心に行われ、また、伊勢神宮の神田では五十鈴川の水で神宮のお祭りにお供えされるお米を育てています。
二次産業の工業は、以前は造船業が盛んでしたが、シンフォニアテクノロジー(旧:神鋼電機)伊勢製作所などでタッチパネル式券売機やロケット・飛行機部品などを製造する傍ら、陸上養殖システムなど多方面の研究をしています。また、キクカワエンタープライズは新幹線関係のプラントなどを製造。一方、企業誘致としては高台に市所有の工業団地を造りましたが、完売し、次にどこにどれくらいの規模で作るか、今年一年研究して判断したいと思っています。
観光業については、今までは伊勢、鳥羽、志摩とセットで考えていましたが、数年前の動態調査で伊勢のみ訪れる日帰り客が6割以上を占めることが分かり、伊勢に長時間滞在してもらえるよう旅館やホテルの誘致に取り組んできました。平成25年以降に、数軒の旅館・ホテルが伊勢で新規に営業を開始し、近年ではゲストハウスも増えています。このように宿泊施設など新しい建造物が建ってはいますが、伊勢神宮を上から見下ろすような高層ビルの建設は行われていませんし、これから行うことも考えていません。
少子高齢化の一方、グローバル化時代です。
人口は微減で、高齢化率は毎年1%ずつ上昇し、現在30%超です。庁内に情報調査室を設置して中学校区別に将来人口を推計し、それに見合った政策を打ち出し、小中学校の再編などを進めました。下げ止まりには出会い・結婚・出産・育児・教育の総合的な施策が必要と考え、まず「いせ出会い支援センター」をショッピングセンター内に設置しました。年間3,000件の相談を受け、マッチングのお手伝いをしています。
グローバル時代で英語教育の充実は必須です。外国人講師を10年間で2倍に増やし18人にしました。また、英検受験の年一回全額補助を行い、中学校卒業時点での3級合格者を27%にしました。AI対応でプログラミング教育のため、電子黒板やタブレット端末の普及は三重県内で高水準となっています。さらに、元となる日本語教育も大切で、町から本屋さんが消えていく時代ですが、学校図書館の充実を図り、指定管理者による司書の配置を進め、貸出数は1.5~2倍に増えました。
南海トラフも懸念されます。
防災は一丁目一番地です。伊勢市は、沿岸から街中まで平地で、津波が発生し堤防が機能しなかった場合、市役所は50センチ以上浸水します。このため、小中学校などに外付け避難階段を19か所設置し、津波避難施設を8か所造りました。ただ、市単独では限界があるので、国や県とも連携しながら対策を進めています。
主力の観光業の今後については?
3つの施策があります。①インバウンド、②バリアフリー、③スポーツです。①インバウンドについては、伊勢市の観光は依然として国内中心ですが、インバウンド誘客として、国の海外情報発信拠点「ジャパンハウス(ロンドン、ロサンゼルス、リオデジャネイロ)」を活用したいと参画を働きかけています。②は高齢者、障がい者の方々へのおもてなしの取組です。現在、伊勢神宮の外宮と内宮、それぞれの入口にある衛士見張所でも車いすの貸出しを行っていただいていますが、平成13年は8,000台の車椅子利用による参拝があったのに対して、近年は2万台近くに増えています。車椅子での内宮正宮の石段の乗降も、大学生やボランティアで対応していただいており、NPOや地元の関係団体と協力して、これらの充実を図っているところです。③は毎年恒例のお伊勢さんマラソンで1万人以上の方に参加いただいているのに加えて、サッカー、野球、テニス、陸上競技などのスポーツ大会や合宿で年間約2万人が伊勢を訪れています。合宿誘致の補助などをさらに拡充し、お客さんの誘致につなげていくつもりです。
休日の過ごし方や趣味などについては
休日はアマゾンプライムで映画などを見ています。最近ではBBC制作のローマ時代のドラマを楽しみました。また、ドラッカーの経営書などを愛読しています。